2ヶ月前、品川のお客様から「IHが急に反応しなくなった、夕食が作れなくて困っている」という緊急の電話があった。話を聞いてみると「チャイルドロックがかかったまま」という状況だった。解除方法を電話口で案内したら30秒で解決。お客様に「こんな簡単なことだったんですね」と笑っていただいた。
家電修理の現場で15年、IHクッキングヒーターの修理相談は年間に相当数を受けてきた田中誠だ。IHが反応しないと聞いて「壊れた」と思い込む方が多いが、実際に部品交換が必要な故障は全体の2〜3割程度だ。残りは鍋の素材の問題、チャイルドロック、電源系のトラブル、センサーの誤作動で、自分で解決できる。
この記事では「なぜ反応しないのか」を症状・エラーコード別に整理し、今すぐできる対処法を具体的に解説する。
IHクッキングヒーターが反応しない6つの原因
15年の修理経験から、IHが反応しない原因は大きく6つに分類できる。
- IH非対応の鍋を使っている(全体の約40%)
- チャイルドロックが有効になっている(全体の約20%)
- 電源・ブレーカーの問題(全体の約10%)
- 安全装置(過熱防止・鍋なし検知)の作動(全体の約15%)
- エラーコードによる停止(全体の約10%)
- 基板・センサーの故障(全体の約5%)
この順番に確認していけば、ほとんどの場合は修理不要で解決できる。
原因1:IH非対応の鍋——修理より先に確認すべき最重要ポイント
IHクッキングヒーターで最も多い「反応しない」原因は鍋の素材だ。IHは電磁誘導(磁力)で鍋自体を発熱させる仕組みのため、磁力が通らない素材の鍋は物理的に加熱できない。
IH対応・非対応の素材一覧
| 素材 | IH対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 鉄製(鋳鉄含む) | 対応 | ほぼすべてのIHで使用可 |
| ステンレス製 | 一部対応 | 磁力が通るステンレスのみ |
| ほうろう製 | 対応 | 鉄ベースのためIH対応 |
| アルミ製 | 非対応(例外あり) | オールメタル対応IHのみ使用可 |
| 銅製 | 非対応(例外あり) | オールメタル対応IHのみ使用可 |
| 耐熱ガラス・陶器・土鍋 | 非対応 | ラジエントヒーターは使用可の機種あり |
手軽な確認方法
鍋の底面に磁石を当てるのが最も確実な確認方法だ。磁石がくっつけばIH対応の可能性が高い(ただし、弱い磁石だと確認しにくいステンレスもある)。鍋の底面に「IH対応」「All Stove」などのマークがあれば確実に使用できる。
鍋底の形状も重要
IH対応素材であっても、底面の直径が小さすぎる(おおむね12cm以下)鍋や、底面が反っている(底が平らでない)鍋は検知できないことがある。鍋の底とトッププレートをしっかり密着させることが重要だ。
原因2:チャイルドロックの解除
冒頭で紹介した品川のお客様のケースだ。チャイルドロックが有効になっていると、ボタンを押しても一切反応しない。「故障した」と思い込みがちだが、まず確認すべきポイントだ。
チャイルドロックの特徴
- 本体のLED表示に「LOCK」「鍵マーク」が表示されていることが多い
- 電源ボタン以外のすべてのボタンが無効になる
- 一部機種では電源ボタンも無効になる
解除方法(機種によって異なる)
- 「ロック」ボタンを3〜5秒長押し
- 「タイマー」と「切」ボタンを同時押し
- 電源を一度OFFにして再度ONにする
具体的な解除方法は機種によって異なるため、取扱説明書の「チャイルドロック解除」のページを確認してほしい。取扱説明書がない場合はメーカーのサポートサイトで機種名を検索すれば手順が見つかる。
原因3:電源・ブレーカーの確認
IHクッキングヒーターは消費電力が非常に大きい家電だ。ビルトインIHで最大5,800W(200V)、卓上IHで1,400W(100V)程度になる。
確認すべき項目
ビルトインIHの場合
- 分電盤のIH専用ブレーカーが落ちていないか確認する
- 200V専用回路が正常に通電しているか確認する
- IH専用ブレーカーを一度OFFにしてから再度ONにする(リセット)
卓上IHの場合
- 電源プラグがしっかり差さっているか確認する
- 別のコンセントで試す
- ブレーカーが落ちていないか確認する
ブレーカーが繰り返し落ちる場合は、電気回路の容量問題か、IH本体の内部ショートが疑われる。電気工事店またはメーカーに相談してほしい。
原因4:安全装置の作動
IHヒーターには複数の安全装置が搭載されており、異常を検知すると自動停止する。これ自体は正常な動作だが、誤検知で停止することもある。
鍋なし検知
鍋を置かずにスイッチを入れると自動停止する。また、底面が小さすぎる鍋や、センサーと鍋底の距離が適切でない場合も「鍋なし」と誤検知することがある。鍋を中央に正しく置いてから操作する。
過熱防止センサー
空焚きや鍋底の温度が異常に高くなると自動停止する。電源を切って10〜15分冷ましてから再起動する。トッププレートが熱い状態では次の加熱が始まらない機種も多い。
連続使用制限
長時間連続使用すると基板や制御系の保護のために自動停止または出力を下げる機能がある。15〜30分程度冷ましてから再使用する。
冷却ファンの詰まり
IHヒーターはコイルと制御基板を冷却するファンを内蔵している。換気口がほこりで詰まるとオーバーヒートして自動停止する。換気口周辺を掃除機で清掃し、IH周囲に十分なスペース(左右・後方それぞれ5cm以上)を確保する。
原因5:エラーコード別の対処法
エラーコードが表示された場合は、その内容に応じた対処が必要だ。主要なエラーコードと対処法を一覧にした。機種によってエラーコードの意味が異なるため、取扱説明書も必ず確認してほしい。
| エラーコード | 意味 | 対処法 |
|---|---|---|
| E0・E1 | 鍋なし検知 | IH対応の鍋を中央に置き直す |
| E2 | 過熱エラー | 電源を切って10〜15分冷ます |
| E3・E4 | 温度センサーエラー | 電源を切って再起動。改善しなければ修理依頼 |
| E6 | 冷却ファンエラー | 換気口清掃後に再起動。改善しなければ修理依頼 |
| H | 高温警告 | プレートが冷えるまで待つ(正常動作) |
| Er | 内部エラー | 電源を切って再起動。改善しなければ修理依頼 |
電源を切って再起動(リセット)してエラーが消えた場合も、同じエラーが繰り返す場合は修理依頼が必要だ。
トッププレートの汚れとメンテナンス
トッププレート(ガラス天板)に焦げ付きや汚れが蓄積すると、鍋の検知精度に影響することがある。また、汚れが鍋底とプレートの密着を妨げ、加熱効率を低下させる。
正しい清掃方法
- 使用後はプレートが冷えてから柔らかいスポンジで拭き取る
- 焦げ付きはIH専用のガラスクリーナー(500〜1,500円程度)で除去する
- こびり付いた汚れはプラスチック製のスクレーパーで慎重に除去する
絶対にやってはいけないこと:研磨剤入りのクレンザーや金属たわしを使うことだ。トッププレートに細かい傷がつくと、そこから割れや欠けが生じることがある。
修理 vs 買い替えの判断基準
E3・E4(センサーエラー)やE6(ファンエラー)が修理不要で改善しない場合、基板やセンサーの交換が必要になる。
修理費用の目安
- ビルトインIH(据付型):20,000〜60,000円程度
- 卓上IH(ポータブル):10,000〜30,000円程度
買い替えを推奨するタイミング
- 製造から10年以上経過している(メーカーの修理部品保有期間は製造終了から8〜10年が多い)
- 修理見積もりが買い替え費用の50%を超える
- 同じエラーを繰り返す
最新のIHヒーターは省エネ性能が大幅に向上しており、10年前の機種と比べると電気代が年間数千円程度削減できることも多い。長年使用している機種であれば、買い替えを検討する価値は十分にある。
よくある質問(FAQ)
Q1: IHを使っているのに鍋が温まらない原因は何ですか?
IHで鍋が温まらない最も多い原因は、鍋がIH非対応の素材であることです。IHは電磁誘導で鍋自体を発熱させるため、磁力が通らないアルミ製・銅製・耐熱ガラス製・陶器製の鍋は加熱できません。鍋の底に磁石を当ててくっつくかどうか確認してください。くっつかない場合はIH非対応です。また、鍋底の直径が小さすぎる場合(おおむね12cm以下)や、底面が反っている場合も加熱されません。チャイルドロックがかかっているかどうかも確認してください。これらを確認してもなお温まらない場合は、エラーコードの表示を確認してからメーカーのサポートに相談してください。
Q2: IHのエラーコードが表示されました。電源を切れば直りますか?
エラーコードによって対応が異なります。E0・E1(鍋なしエラー)やH(高温警告)は鍋を置き直すか冷えるまで待てば正常に戻ります。E2(過熱エラー)は電源を切って10〜15分冷ましてから再起動すれば通常は改善します。一方、E3・E4(温度センサーエラー)やE6(ファンエラー)は電源を切って再起動しても改善しない場合はセンサーやファンの故障が疑われ、修理が必要です。同じエラーを繰り返す場合はメーカーのサポートか修理業者に連絡してください。エラーコードの意味は機種によって異なるため、取扱説明書も合わせて確認してください。
Q3: IHのボタンを押しても全く反応しません。壊れていますか?
ボタンを押しても全く反応しない場合、まずチャイルドロックの確認をしてください。チャイルドロックが有効になっていると、すべてのボタン(機種によっては電源ボタンも)が無効になります。本体のLED表示に「LOCK」や鍵のマークが表示されていないか確認し、取扱説明書に従ってロックを解除してください。次に電源プラグやブレーカーを確認してください。これらを確認しても反応しない場合は、基板の故障が疑われます。製造から5年以上経過している場合は修理費用と新品購入費用を比較した上で、メーカーまたは修理業者に相談することをお勧めします。
Q4: 土鍋や陶器の鍋をIHで使いたいのですが、使えますか?
一般的な土鍋や陶器の鍋は通常のIHクッキングヒーターでは使用できません。ただし、一部のIHヒーターには「ラジエントヒーター機能」が搭載されており、その機能を使えば土鍋や陶器も使用できます。また、土鍋底部に鉄製のプレートを敷いてIHに対応させる「IH用土鍋プレート」という製品も市販されています(1,000〜3,000円程度)。なお、最近は土鍋の底に磁力を通す素材を埋め込んだ「IH対応土鍋」も販売されており、これを使えば直接IHで土鍋料理が楽しめます。購入時に「IH対応」の表示があるか確認してください。
Q5: IHクッキングヒーターの寿命はどれくらいですか?
IHクッキングヒーターの平均寿命はビルトイン型で10〜15年、卓上型で5〜8年程度とされています。ただし、使用環境やメンテナンス状況によって大きく異なります。トッププレートの清掃、換気口周辺の清掃、鍋のサイズを適切に選択するなどの適切なメンテナンスを行うことで寿命を延ばせます。製造から10年以上経過したビルトインIHは修理部品が入手できない可能性があるため、故障が発生した場合は買い替えを検討してください。最新のIHヒーターは省エネ性能が向上しており、長期的には電気代の節約にもなります。
Q6: IHのトッププレートが割れた場合、修理できますか?
IHのトッププレート(ガラス天板)が割れた場合は、絶対にそのまま使用を続けないでください。割れた部分から電気が漏れる危険があります。トッププレートの交換修理は可能で、費用はビルトイン型で30,000〜50,000円程度、卓上型で10,000〜20,000円程度が目安です。ただし、製造から7〜10年以上経過している場合はトッププレートの部品が入手できないことがあります。その場合は買い替えが必要です。トッププレートの割れを予防するには、重い鍋を勢いよく置かない、急激な温度変化を避ける(熱いプレートに冷たい水をかけないなど)ことが重要です。
まとめ
IHクッキングヒーターが反応しない原因の大半は、鍋の素材の問題かチャイルドロック、電源系のトラブルで、自分で解決できる。まずこの順番で確認してほしい。
それでも改善しない場合はエラーコードを確認して対応し、それでもダメなら修理依頼を検討する。製造から10年以上経過している機種は、修理より買い替えのほうが長期的にコスパが良いことが多い。
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